Googleは2026年11月5日、AIエージェントの実行基盤「Agent Substrate」の1.0到達と、Google Kubernetes Engine(GKE)での一般提供を発表しました。同時に、Agent Substrate、gVisor、OpenRLの3つのオープンソースプロジェクトをCNCFへ寄贈するとしています。Google Cloudの発表
自社向けのAIに、回答を作るだけでなく、プログラムの実行やファイルの加工まで任せたい。その段階で重要になるのが、どこで作業させ、どこまで触らせるかです。今回の発表は、そうしたAIの作業場所を安全に分け、多数の利用者に提供するための基盤に関するものです。

作業環境の隔離と計算資源の共有を表す概念イラストです。実際の製品画面や構成図ではありません。
AIの作業を「別の場所」に閉じ込める
AIエージェントは、目的に合わせてツールを使い、複数の作業を進める仕組みです。生成したプログラムや外部のパッケージを実行する場合、処理に問題があっても、他の利用者や会社のシステムに影響が広がらない設計が必要になります。
そのために使う隔離された実行環境を、サンドボックスと呼びます。Agent Substrateでは、軽量な仮想マシンであるmicroVM、またはgVisorによる隔離を選べます。gVisorは、プログラムとホストOSの間に別の処理層を置き、ホストへの直接的な接触を減らす技術です。Agent Substrate/gVisorの説明
また、Agent Substrateは外部への通信を許可ルールで制御し、接続先に必要な認証情報を外側のゲートウェイで付加する設計を採っています。AIの作業環境に、業務システムの鍵をそのまま持たせずに接続を管理する狙いです。プロジェクトの安全設計
ただし、許可した接続先での操作まで自動的に正しくなるわけではありません。たとえば顧客情報を更新する権限を与えるなら、対象や変更範囲、人による確認のタイミングも別途決める必要があります。
待っている間は休止し、続きを再開する
AIは、モデルの応答や人の承認を待つ時間があります。その間も利用者ごとの実行環境を動かし続けると、メモリなどの資源を占有します。
Agent Substrateは、エージェントの記憶やファイルを持つ単位と、実際に処理する場所を分けます。待機時に状態を保存して処理用の場所を空け、次の依頼が来たら保存した状態から再開します。Googleの技術解説
事業で考えるなら、利用者ごとに資料を加工するAIや、担当者の確認を待ちながら開発を進めるAIなどが候補です。毎回最初から準備し直す手間と、待機中の資源消費の両方を抑える方向の技術と捉えると分かりやすいでしょう。
実際の費用は、同時に動く件数、保存する状態の大きさ、待機時間、基盤の運用費によって変わります。小規模な用途でも必ず安くなる、という発表ではありません。
GKE版を使う前に確認する条件
Kubernetesは、複数のコンピューター上でアプリの実行や配置を管理する仕組みです。GKEはGoogle Cloudが提供するKubernetesのサービスです。
導入を検討する技術担当者は、発表記事に加えて利用要件を確認する必要があります。公式ドキュメントでは、GKE版は自分のGKE Standardクラスタへ配置するオープンソースシステムと説明されています。GKE版の仕様・制限
確認時点の主な条件は次のとおりです。
- GKE Standardのバージョン1.37以降が対象。Autopilotは対象外。
- Workload Identity Federation for GKEの有効化が必要。
- Agent Substrateを動かすノードプールでは、GKE Sandboxを有効にしない。実行基盤側が独自の隔離ランタイムを使うため。
- 休止前のデータベースやMCPサーバーへの接続は維持されない。再開時に接続し直す処理が必要。
- GPUをエージェントのコンテナへ直接渡す機能には制限がある。
これらはGKE版の条件です。料金総額や利用するリージョンでの構成可否、既存アプリとの互換性は、個別に見積もり・検証する必要があります。
CNCFへの寄贈と「Sandbox」の意味
CNCFは、クラウド基盤のオープンソースプロジェクトを支える団体です。Googleによると、今回の3プロジェクトは前月にCNCF Sandboxへ受け入れられ、参加手続きを進めています。OpenRLは、AIの強化学習をKubernetes上で実行するための別のプロジェクトです。Google Cloudの発表
ここでのCNCF Sandboxは、プロジェクトを受け入れ育てる段階の名称です。プログラムを隔離するサンドボックスとは意味が異なり、導入先の安全性を保証する認証ではありません。CNCFの説明
事業者が開発担当者に確認したいこと
すでにAIサービスを利用するだけなら、この基盤を自社で導入する必要があるとは限りません。一方、顧客や社員ごとにAIの作業環境を用意するサービスを開発する場合は、次の点を相談する材料になります。
- 作業場所とデータの境界。 利用者同士のファイルや作業内容が混ざらず、本番環境とも分かれているか。
- 外部へできる操作。 参照・更新・送信のうち何を許可し、どこで人の承認を挟むか。
- 保存と再開。 休止中に何が保存され、誰が読めて、いつ削除されるか。
- 実測した費用と運用負担。 想定する利用件数で、従来方式より総費用や待ち時間を改善できるか。
まずは本番データを使わない一つの業務で、隔離、再開、権限、費用を確かめるのが現実的です。AIに任せる範囲を広げるときは、モデルの性能だけでなく、作業場所とアクセス権の設計も合わせて検討しましょう。
情報確認日:2026年11月7日。利用要件は変更される場合があります。本記事では実環境での導入・性能検証は行っていません。